蓬莱観は、明治15年に建築された劇場で、当代きっての歌舞伎役者や有名役者が公演を行い、近隣や県外から多くの観客が訪れ賑わいを見せていました。戦時中の強制疎開により建物の取り壊しにあいましたが、戦後まもなく、この場所に日本庭園が整備され、現在は四季折々にその姿を変える風光明媚な場所となっています。庭園には桜の木が多く、中でも楊貴妃という江戸彼岸桜は、春には華麗な花を咲かせ、散った花びらが庭園中をピンク色に染め、まるで花びらの絨毯を敷いたような、得も言われぬ景色に魅了されます。また、新緑や紅葉の時期には、庭園の木々が美しく彩り、多くの観光客が訪れています。 庭園の中には「ギャラリー茶論・蓬莱観」があり、劇場だった頃、使用されていた引き戸やケヤキの1枚戸、歌手の東海林太郎が訪れた際に使用したピアノが残されており、往時を偲ばせています。建物の中からは、座ったまま目の高さで桜を眺めることができ、アンティークなガラス戸を通して見える景色は屏風絵のようです。外から見ると「絵画」として、中から見ると「美術」として、同じ景色を2度楽しむことができます。また、茶道の師範であるオーナーの点てる抹茶や、こだわりのビーフカレーを味わうことができ、ゆっくりとした時間を過ごすことができます。